FXには、自己資金以上の金額を取引できる『レバレッジ』という仕組みがあります。
例えば『ドル円1万通貨』は100万円超の価値ですが、FXで取引する為に必要な最低資金は5万円弱。
なぜ自分のお金よりも大きな取引ができるのか・・・
・そもそもレバレッジとは?
・なぜ少ない金額で取引が出来る?
・『証拠金取引』という仕組み
・『必要証拠金』『証拠金維持率』『強制決済』の関係
これらの項目について、まとめて行きたいと思います。
一言でまとめると
『証拠金を上回る損失が出た時点で強制的に決済するから、担保にちょっと預けておけば良いことになっている』
そもそもレバレッジとは?
FXでは、最大で自己資金の25倍までの取引を行うことが出来ます。
例えば1ドル=100円の時、1万通貨(1万ドル=100万円相当)の取引をするのに必要な資金は、僅か4万円。少ない金額で大きな取引ができることから、レバレッジ(てこ)と呼ばれます。
上手く使えば非常に有効なこの仕組み。でも、何でこんなことが出来るんでしょうか?
・FXは現物を受け渡しせず、差金決済によって取引されるものだから
・通貨は株などに比べ流動性が高く、強制決済が執行しやすいから
・一気に5%、10%も値動きがあることは稀だから
法的な根拠はともかく、実態としてはおよそこんな理由でしょう。
以下、それぞれについて解説していきます。
FXは現物を受け渡しせず、差金決済によって取引されるものだから
FXは、『買う』『売る』とか表現をしますが、実物の通貨をやり取りする訳ではありません。
ドル円1万通貨の買いポジションを持ったから、1万ドルを紙幣で用意してくれるかと言ったらそんなことはなく、ユーザーにとってはエントリーから決済までFX会社の中で完結します。
4万円しか預けていないのに100万円分の通貨を持ち出されたらFX会社は大変ですが、実際には現物は渡されないのでその心配はありません。
※一部FX会社は外貨出金に対応しています。
通貨は株などに比べ流動性が高く、強制決済が執行しやすいから
4万円を預けて100万円分の取引をした。
そこで2万円の損失が出た場合は預けている証拠金から2万円が引かれるだけですが、4万円以上の損失が出てしまうと、FX会社は不足分を利用者に請求する必要が出てきます。
全員が素直に払ってくれればいいのですが、中には払えない人・払う気が無い人もいる訳ですから、FX会社は回収漏れを起こさない為に損失が4万円以上に拡大する前に強制的にポジションを決済してしまいます。(強制決済 / ロスカット)
これが株だったら連日のストップ安などで強制決済できないリスクがありますが、通貨は流動性が高いので基本的には即時に決済が可能です。
一気に5%、10%も値動きがあることは稀だから
4万円を預けて100万円分の取引。
元本がゼロになるには、4%の値動きが発生することになります。ドルが100円→96円になる感覚。株などに比べたら、一瞬でこれ程の動きがあることは稀です。
上の項目で『基本的には即時に決済が可能』と書きましたが、たまに即時に決済できない場合があります。
例えば指標発表時や要人発言、自然災害、戦争などなどによる急変時。最近だとスイスフランショックとか強烈でしたね。
スイスフランショックとは
2015年、スイス中銀が3年以上に渡り無制限に介入を行っていたユーロ/スイスフラン1.2の防衛線を突如撤廃することを発表し、僅か20分で3800pipsもの大暴落(スイスフラン高)が発生したもの。
ドル円で言ったら、122円くらいだったドルが20分後に84円になっていたというレベルの激動。
『証拠金取引』という仕組みについて
上で説明した3つの理由については、あくまでも『レバレッジを掛けた取引をしても個人・FX会社が破綻する可能性は低い』という運用面の理由に過ぎません。
レバレッジを掛けた取引を成立させる技術的な根拠は、『証拠金取引』という仕組み。
利用者がFX会社に入金しているお金は証拠金と呼ばれ、実際にそのお金を使って売買するというよりは取引を行う為に担保として預けているお金という性質があります。
『差金決済』と密接な関係にあるのですが、以下のような違いがあります。
つまり二つの仕組みがあって初めてレバレッジを掛けた大きな取引が可能になるのです。
『必要証拠金』と『証拠金維持率』と『強制決済(ロスカット)』
実は、レバレッジの本質は『資金の25倍までの取引ができる』ではなく、『取引額の4%以上の証拠金を維持する必要がある』と言った方が正確です。
つまり、100万円の取引をする為には4万円以上の評価額(証拠金-評価損)を維持しておけよ、ということ。
この『取引額の4%以上の証拠金』というのが『必要証拠金』です。
そして、必要証拠金をどのくらい満たしているか(時価評価額÷必要証拠金)を『証拠金維持率』と言います。
言い換えれば、証拠金維持率100%以上をキープしていればOKということです。これが100%を割り込んだら、強制決済されます。
※強制決済が行われるタイミングはFX会社によって異なります。100%を割った時点で強制決済されることもあれば、80%まで待ってくれることも。
必要証拠金の算出はFX会社によって若干差があり、
・A:リアルタイムのレートの4%
・B:前日の終値(NYクローズ)の4%
・C:先週末の終値の4%
などなど、基準とする数値が異なる場合があります。
例えば、1ドル = 100円の時、1万通貨あたりの必要証拠金は40,000円です。(100万円 × 4%)
この時、10万円の証拠金で買いポジションを持ったとします。
その日のうちに1ドル=94円まで下落すると、6万円の評価損が発生します。(6円の下落 × 1万通貨 = 6万円の損失)
必要証拠金の扱いがAの場合にはレートの下落によって必要証拠金も減少し、時価評価額4万円 ÷ 必要証拠金3.76万円 = 証拠金維持率106.38%。若干ですが余裕があります。
必要証拠金の扱いがB,Cの場合には、証拠金維持率100%(時価評価額4万円・必要証拠金4万円)となり、あと少しでも下落したら強制決済です。
証拠金の構造を図にするとこのようになります。
評価損益がプラス(含み益)の場合、必要証拠金+余力+評価益=時価評価額となります。
※評価益を余力に含むかどうかは、FX会社によって扱いが異なります。
おまけ:レバレッジが25倍を超えることも!?
上で書いたように、FX会社によっては必要証拠金が前日以前のレートで算出される為、理論上は実質のレバレッジが25倍を超えることもあり得ます。
例)
必要証拠金基準値 = 昨日終値:1ドル = 90円
1万通貨あたりの必要証拠金 = 36,000円(90円 × 1万通貨 × 4%)
この後、1ドル = 100円まで急上昇しても、必要証拠金は36,000円のまま。
→100円 × 1万通貨 = 100万円分の取引を、36,000円の証拠金で行うことができる。(実質レバレッジ:100万円 ÷ 3.6万円 = 27.77倍)
ただしここまで極端な例は稀ですし、リアルタイムのレートに基づいて必要証拠金が算出される場合にはこの現象は起こりません。
まとめ
・FXでレバレッジが掛けられるのは、現物を受け渡さずに決済時の差額だけ清算する差金決済取引だから。
・損失が拡大する前にFX会社によって強制決済が行われることで両者の安全が担保される。
・FXは株などと比べて流動性も高く、強制決済も確実性が高い。
・これらの算出には、『必要証拠金』と『取引余力』から計算される『証拠金維持率』が使われる。